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レジオネラ属菌について

 レジオネラ属菌は,自然界の土壌や淡水中の自然生活菌であって,ヒトの皮膚,粘膜に寄生したり感染しなくても生存できる。大腸菌と同じグラム陰性桿菌であるが,大腸菌よりも少し細長い。大腸菌と異なりブドウ糖を発酵しない。通常の細菌学用培地に発育しないため発見されなかった。

 自然界や人工環境水では他の細菌や藻類の代謝産物を利用して生育すると考えられる。その他にアメーバなど細菌捕食性(細菌を餌にする)原生動物に取り込まれると,細胞内で消化されずに増殖し続け宿主を殺す。崩壊した宿主細胞から多数のレジオネラが放出され,新しい宿主に入る。レジオネラ属菌は水中を遊泳しているものの他に,配管内壁や装置内面の水に触れる部分に形成された生物膜(バイオフィルム)の中でも生育する。生物膜内部の菌は紫外線や薬物などの殺菌効果が無く保護されていると言われる。

 実験室内で人工培地を使用する場合,レジオネラ属菌の発育至適PHは6.9±0.1と狭いが,伊豆長岡温泉ではPH6.2〜9.0の範囲の浴槽水から検出されている。この相違の理由は不明である。人工培地上での発育至適温度は36℃前後であるが,25℃から43℃でも生育する。保護剤(保存培地等)とともに凍結すれば-80℃でも死滅しない。冷却塔水などのレジオネラ属菌は4℃〜5℃で一年間生存する。このような低温では増殖しないが,環境が適温になれば増殖を開始する。70℃のお湯に直接接触すれば5秒以内に,60℃のお湯,または0.4ppmの遊離残留塩素に接触すれば15分以内に死滅する。レジオネラ属菌は清浄な水中では紫外線で殺菌されるが、その後に可視光線を受けると光回復(紫外線で障害されたDNAが可視光線によって修復される)によって生き返る。

 ヒトへの感染は,この菌を包んでいる微小な水粒子(エアロゾル)を吸引し,あるいは,この菌で汚染された水を吸引した場合に起こる。病原性は菌株によって異なると考えられている。免疫系が完成されていない新生児,40歳以上の特に男性,代謝異常(糖尿病など)や悪性腫瘍(癌,白血病等)のある人がかかりやすいと考えられる。従来の伝染病と同様,感染・発病の要因を説明したり,感染菌量を数値で明示することは現在まだ不可能である。経気道感染が主と考えられているが,創傷感染も報告されている。主要な標的臓器は肺であるが,感染成立後に菌は血液中に入るので,新生児では両肺の全体に播種性の小病巣を無数に形成し,成人では心膜炎を起こすことがあり,腹水からの検出も報告されている。レジオネラ肺炎患者が発病初期から中枢神経症状を示す原因は解っていない。

 消化器からは感染しないと考えられているが,レジオネラ肺炎患者が激しい下痢を起こすことが知られており,その下痢便からアメーバを使ってレジオネラを検出したという報告がある。レジオネラ感染症の主要な病型は,肺炎と肺炎にならずに自然治癒するポンティアック熱の2つである。レジオネラ肺炎は成人呼吸窮迫症候群などの多臓器障害を起こして多彩な臨床病状を示し,劇症例では発病後,一週間で死亡する。一般のグラム陰性桿菌肺炎に有効な化学療法剤が無効なこと,および患者の気道材料の培地で原因と思われる細菌が検出されないことから,レジオネラ肺炎の疑い,そのための検査に必要な材料を採取した後,速やかに治療方針を転換しなければならない。有効な科学治療剤はマクロライド系,ニューキノロン系,テトラサイクリン系の一部のもの,およびリファンピシンであるとされている。レジオネラ肺炎に気がつかず,そのための化学療法剤を使用しないと予後は悪い。しかし適正化学療法剤を使用しても救命できない場合もある。ヒトからヒトへの伝染は認められていない。集団感染は,共通の感染源から複数のヒトが感染する。

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